湊総合法律事務所

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1.遺留分の基礎知識

民法改正について

相続関係に関する民法が、約40年ぶりに大幅に改正されました。
この改正民法は、遺留分に関する規定については、2019年7月1日から施行されています。
今回の民法改正により、遺留分制度についても種々の重要な点が改正されました。
以下では、遺留分制度について、改正前と改正後を比較しつつ、説明します。


遺留分とは

Q1 遺留分とは何ですか。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人(「遺留分権利者」といいます)に最低限留保された相続財産の割合のことです。
具体的には以下のとおりです(改正前民法1028条)。

 (1) 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の1/3
   (父と母のみが相続人である場合、法定相続分1/2を掛けてそれぞれ1/6ずつ)
 (2) (1)以外の場合 被相続人の財産の1/2
   (子供2人のみが相続人である場合、法定相続分1/2を掛けてそれぞれ1/4ずつ)

以上の点については、民法改正による内容の変更はありません(条文番号が、1042条に変更となっています)。

 

Q2 遺留分は具体的にはどうやって算出すればよいですか。

遺留分の算定の基礎となる財産の計算にあたっては、民法改正により、内容の変更がなされているので、以下で説明します。
 
<改正前民法>
まず、遺留分の算定の基礎となる財産を計算します。
計算式は以下の通りです。

被相続人が相続時に有していた積極財産
+被相続人が相続開始前の1年間に贈与した財産
+被相続人と受贈者双方が遺留分権利者の遺留分を侵害することを知って贈与した財産
+被相続人と受贈者双方が遺留分権利者の遺留分を侵害することを知って不当な対価で有償処分した財産
+特別受益となる贈与
+共同相続人間で行われた無償で譲渡した相続分の財産 
-被相続人が相続時に有していた消極財産

遺留分権利者毎に遺留分の額を把握するには、上記計算によって出た財産の額に対してQ1の割合(遺留分の割合×法定相続分)を掛け、さらに当該遺留分権利者が相続により取得した財産を引き、そして当該遺留分権利者の相続債務額を足します。


<改正民法>
遺留分の算定の基礎となる財産の計算にあたっては、民法改正により、以下の3点が変更となりました。

①相続人に対する特別受益について
改正前民法下の判例、実務では、相続人に対する贈与の場合は、贈与の時期に関係なく、10年以上前のものについても、遺留分算定の基礎となる財産に加算して、遺留分侵害額を計算することとされていました。
 
しかし、上記帰結には、被相続人が何十年も前に行った相続人に対する贈与によって、受遺者又は受贈者が、減殺請求を受けることとなり不都合であるという批判がされていました。
そこで、民法改正により、相続人に対する贈与についても期間制限を設け、相続開始前10年間に行われたものだけを遺留分算定の基礎となる財産に加えることが規定されました(改正民法1044条3項)。また、遺留分算定の基礎となる財産に加える対象の贈与の価額については、「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る」との限定が設けられました。
 
ただし、相続人に対する贈与及び相続人以外の者に対する贈与についても、贈与の当時、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った場合には、贈与の時期に関係なく、遺留分算定の基礎となる財産に加える必要があります(改正民法1044条1項但書)。
 
②負担付贈与について
改正民法下では、負担付贈与の計算方法について、学説上見解が分かれていました。
しかし、民法改正により、負担付贈与が行われた場合には、贈与財産額に、目的の価額から負担の価額を控除した額を遺留分の算定の基礎となる財産に加えることが明確となりました(改正民法1045条1項)。
 
③不相当な対価による有償行為について
改正民法下では、不相当な対価による有償行為の計算方法については、被相続人と受贈者双方が遺留分権利者の遺留分を侵害することを知って不当な対価で有償処分した財産自体の価額を遺留分の算定の基礎となる財産に加えますが、遺留分権利者は不相当な対価の償還が必要でした。
しかし、民法改正により、上記不相当な対価の償還が不要となり、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなすこととなりました。すなわち、不相当な対価による有償行為が行われた場合には、贈与財産額に、不当な対価で有償処分した財産自体の価額から対価額を控除した額を遺留分の算定の基礎となる財産に加えることとなりました(改正民法1045条1項)。
 
したがって、改正民法下では、以下の計算式となります(太字、下線部分が、民法改正により内容が変更となった箇所です)。
 
被相続人が相続時に有していた積極財産
+被相続人が相続人に対して相続開始前の10年間に、婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として贈与した財産
+被相続人が相続人以外の第三者に対して相続開始前の1年間に贈与した財産
+被相続人と受贈者双方が遺留分権利者の遺留分を侵害することを知って贈与した財産
+共同相続人間で行われた無償で譲渡した相続分の財産
目的の価額から負担の価額を控除した財産
+被相続人と受贈者双方が遺留分権利者の遺留分を侵害することを知って不当な対価で有償処分した財産から不当な対価額を控除した財産
-被相続人が相続時に有していた消極財産
 
遺留分権利者毎に遺留分の額を把握するには、上記計算によって出た財産の額に対してQ1の割合(遺留分の割合×法定相続分)を掛け、さらに当該遺留分権利者が相続により取得した財産を引き、そして当該遺留分権利者の相続債務額を足します。

 

遺留分減殺請求(改正民法においては、遺留分侵害額請求)について

Q1 被相続人が、相続人の一部又は第三者に、遺留分を超えて遺贈や贈与をして

いたことが相続開始後に判明した場合、どうしたらよいですか。



このような場合を、遺留分の侵害があったといいます。
今回の民法改正で、遺留分に関する請求権の名称とその効果が大きく変わり、また、効果の変更に伴い新たな制度も新設されたので、以下で説明します。
 
<改正前民法>(遺留分減殺請求の名称は、改正により遺留分侵害額請求に改められましたが、以下は改正前民法下での説明ですので、以下では遺留分減殺請求と表記しております。)
遺留分権利者およびその承継人は、遺留分を侵害されたことを理由に、遺留分を超えて遺贈または贈与を受けた受遺者または受贈者(遺留分侵害者)に対して、財産を取り戻す権利を行使することができます(改正前民法1031条)。

これを遺留分減殺請求権といいます。

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき遺贈又は贈与があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。

また、相続開始を知らない場合でも、相続開始から10年経過したときは消滅します。

<改正民法>(遺留分減殺請求の名称は、改正により遺留分侵害額請求に改められましたが、改正前民法下における説明については、遺留分減殺請求と表記しております。)
改正前民法下では、原則、遺留分減殺請求権の行使により、当然に物権的効果が生じますが、例外的に、侵害者が、遺留分減殺請求権を受けた後に価額弁償の抗弁により金銭賠償を行うという制度設計でした。
 
しかし、民法改正により、遺留分が侵害された場合には、改正前では例外であった、金銭請求(遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求)が認められることとなりました(改正民法1046条)。
 
このような改正がなされたのは、遺留分減殺請求権により当然に物権的効果が生じる結果、遺贈又は贈与の目的財産が遺留分権利者と受遺者、受贈者との間で共有となることが少なくなく、この帰結により、円滑な事業承継が困難となり、また、共有の解消をめぐって新たな紛争が生じるとの批判がなされていたからです。
 
この改正に伴い、遺留分減殺請求権の名称は、「遺留分侵害額請求権」に変更になりました。
 
また、金銭債権化に伴い金銭を直ちに支払うことができない受遺者又は受贈者を保護するため、同人らの請求により裁判所が支払につき相当の期限を許与することができる制度が新設されました(改正民法1047条5項)。

 

遺留分の放棄

Q1 遺留分を被相続人の死亡前または死亡後に放棄することができますか。

遺留分権利者は、相続開始の前後を問わず遺留分の放棄することができます。
相続開始前に放棄する場合は、家庭裁判所の許可が必要です(改正前民法1043条1号)。
なお、共同相続人の1人が遺留分を放棄しても、他の共同相続人の遺留分がそれによって増加はしません(改正前民法1043条2号)。
 
以上の点については、民法改正による内容の変更はありません(条文番号が、1049条に変更となっています)。



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