湊総合法律事務所

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6.特別受益と遺留分

特別受益の持ち戻しが免除された場合、みなし相続財産を算定するときには、特別受益たる贈与価額は持ち戻さなくてもよいわけですが、遺留分額を算定するときに、遺留分額算定の基礎となる財産額に算入しなくてもいいのでしょうか。
 
結論から申し上げますと、特別受益があった場合には、その持ち戻し免除の意思表示があろうがなかろうが、必ず遺留分額算定の基礎財産額に算入しなければなりません。
 
なぜなら、そのように解しないと、遺言者が、生前に多額の贈与をしておいて持ち戻しの免除をすることによって、遺留分の基礎財産をいくらでも減らすことができることになってしまって不合理な結果となるからです(最判平成24年1月26日参照)。
 
次に、ここが間違えやすいのですが、特別受益の持ち戻しが免除された場合に、遺留分額算定の基礎財産に算入されるかという問題と、遺留分減殺請求の対象にされるかという問題は、別問題だということです。
 
すなわち、今申し上げたように、持ち戻し免除の意思表示があっても、遺留分額算定の基礎財産には必ず算入されます。
しかし、算入されたとして、その特別受益が遺留分減殺請求の対象となるか否かは別途検討が必要ということです。
 
まず、特別受益が遺留分減殺請求の対象となるかについて1030条との均衡を重視する説があります。
1030条というのは、第三者に対して贈与がなされたときに、亡くなってから1年までの贈与は必ず遺留分算定の基礎財産に算入され、1年を超えて贈与されたものについては、遺留分権利者を害することを知っていた場合にのみ算入されるという規定です。
この見解は、特別受益の場合も、1030条と同じように1年までの部分については、遺留分減殺の対象とされるけれども、1年を超えて相続人に贈与された金額については、遺留分権利者を害すると知っていた場合にのみ、遺留分減殺の対象にするべきだというのです。
 
この問題について最高裁がどのように判断したかというと、減殺請求を認めることが相続人に酷であるなどの特段の事情がない限り、1030条の定める要件を満たさないものであっても遺留分減殺の対象となるとしています(最判平成10年3月24日)。つまり、1年を超える贈与であったとしても、そして遺留分権利者を害することを知らなかったとしても、原則として遺留分減殺の対象になると判断したのです。
 
では、持ち戻し免除の意思表示が遺留分減殺請求によって減殺された場合、どういう効果を生ずるでしょうか。この点に関する最判平成24年1月26日判決は、非常に重要な判決です。
簡単な事例に引き直して考えてみましょう。

図表5.PNG
 
まず、遺留分額を求めなければいけません。相続財産が6000万円、生前贈与額が9000万円ですから、基礎財産は1億5000万円です。先ほど説明しましたように持ち戻し免除がされていてもこの9000万円は遺留分額算定の基礎財産に算入されるわけです。
 
相続人は子乙、丙、丁ですから、総体的遺留分2分の1×法定相続分3分の1で、個別的遺留分は6分の1です。したがって、各人の遺留分額は1億5000万円×1/6で、2500万円となります。

図表5-1.PNG
 
では、各相続人乙、丙、丁は具体的にいくら取得したのでしょうか。
生前贈与の9000万円は持ち戻しの免除を受けていますから、みなし相続財産算定の際にはこれを加算する必要はありません。
 
したがって、みなし相続財産は6000万円ということになります。

ですから、乙、丙および丁は、それぞれ6000万円×法定相続分3分の1で、2000万円を取得し、さらに乙はそれに加えて、持ち戻しの免除を受けた9000万円の合計1億1000万円を取得することになります。

そうすると、丙と丁は、遺留分額2500万円から2000万円を控除して、500万円ずつ遺留分侵害が起こっており、合計で1000万円の遺留分侵害が起こったということになります。
そこで、丙、丁は乙に対してどうやって遺留分侵害を回復していけばよいのかというのが、ここでの問題です。
 
この点について最判平成24年1月26日判決は、持ち戻し免除の意思表示が遺留分減殺請求によって1000万円の限度で失効し、丙と丁は乙に対して遺留分侵害額を直接請求できると判断しました。
つまり、丙と丁は、それぞれ、乙に対して500万円を直接請求して、侵害された遺留分額全額を取り戻すことができるとしたのです。
 
これに対して、原審の大阪高裁はどう考えていたのかというと、持ち戻し免除の意思表示に対して減殺請求をしたのだから、9000万円の持ち戻しの免除のうち、1000万円分が持ち戻されると判断したのです。
そうすると、乙、丙、丁が1000万円を等しく分け合うことになり、各333万3333円を取得することになると考えるのです。
 
結局、乙は、1億1000万円のうち1000万円が、みなし相続財産に持ち戻されて、その3分の1である333万3333円を取得し、合計で、1億333万3333円を取得するということになってしまうのです。
丙と丁は遺留分額が2500万円なのに、2333万3333円しかもらえないわけで、これは不合理です。

そこで、最高裁は、そのような結論では、遺留分権利者において遺留分相当額の財産を確保し得ないことになり、遺留分制度の趣旨に反する結果となることは明らかであるとして、原審を否定したわけです。妥当な判例ではないかと思います。
 

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