湊総合法律事務所

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8.寄与分と遺留分減殺請求権

遺留分を侵害する寄与分額認定の可否

共同相続人の中に寄与分が認められる者がいることがあります。
そのようなときに、遺産分割に際して、他の共同相続人の遺留分を侵害するような寄与分の額を定めることはできるでしょうか。
 
第904条の2では、その4項において、寄与分は被相続人が相続開始時において有していた財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできないとは規定していますが、寄与分額算定の際に遺留分を侵害してはならないとは規定していません。
 
ですから、寄与分額を定める際には、遺贈にまで食い込むことは許されませんが、遺贈を控除した残額の範囲内であれば、遺留分額に食い込む寄与分額を定めることは可能だと解釈されています。東京高決平成3年12月24日もそのように判断しています。
 
もっとも、際限もなくそのような寄与分の定め方をしてしまうと、遺留分権利者の権利を結果的に侵害することになってしまい不合理な場合もあり得ます。
 
そこで、前掲東京高決は、同条第2項は、「家庭裁判所は、…(中略)、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める」と規定しているので、寄与分額算定に際しては、他の相続人の遺留分についても考慮することは当然であり、他の相続人の遺留分を考慮しなくてよいということにはならないという判断をし、寄与分が認められる相続人と他の共同相続人との公平を図っています。
 

寄与分のある共同相続人への遺留分減殺請求

それでは、共同相続人の中に寄与分が認められる者がいて、その寄与分によって他の共同相続人の遺留分が侵害されている場合、遺留分権利者は寄与分が認められる者に対して、遺留分減殺請求を行うことができるでしょうか。遺留分減殺請求の対象になるのは遺贈と贈与に限られています(1031条)。
 
ですから、寄与分を減殺請求の対象にすることはできず、遺留分減殺請求をすることはできないものと解されています。
次に、相続人の寄与に報いるために、「相続人Aの寄与分として全財産の2分の1を与える」など、遺言によって寄与分を定めることはできるかという問題を考えてみましょう。
 
まず、寄与分は遺言事項ではありません。また、904条の2第2項では、寄与分は共同相続人の協議または家裁の調停・審判により定めるとされていて、遺言によって定めるとは規定されていません。
 
仮に遺言によって自由に寄与分を定められるとすると、上述のように、寄与分に対しては減殺請求できないことから、被相続人が遺言をすることにより、全く自由にその財産を寄与分として処分できることになり、遺留分制度の趣旨が没却されることになってしまい不当です。
 
したがって、遺言によって寄与分を定めることはできないものと解されています。
それでは、例えば、父親が、長女に対して、
「あなたは私の最期をみとるまで本当によくやってくれた。」と言って、長女の寄与に報いる目的で多くの贈与や遺贈をした場合に、他の共同相続人はその贈与や遺贈に対して、遺留分減殺請求をすることができるでしょうか。
 
この贈与や遺贈の実質が、被相続人が相続人の寄与に報いてあげたいという気持ちだった場合でも、形式が贈与や遺贈であることをもって遺留分減殺請求ができてしまうのかというのがここでの問題です。
 
贈与や遺贈は遺留分減殺請求の対象ですから、遺留分減殺請求ができて然るべきです。
また、もし減殺請求ができないということになると、寄与の目的だとしてしまえば、贈与や遺贈によって他の相続人の遺留分をいくらでも小さくすることができ、被相続人の全く自由な財産処分を許すことになってしまい、遺留分減殺制度の趣旨を没却することになってしまって不当です。
 
したがって、寄与に報いる目的で贈与や遺贈をした場合であっても、それに対する遺留分減殺請求は制限されないと解されています。

遺留分減殺請求に対する寄与分の主張

では、共同相続人の1人が贈与や遺贈を受けていたときに、その者が他の相続人から遺留分減殺請求を受けた場合、減殺額を減らすために、抗弁として自分の寄与分を主張することができるでしょうか。
 
条文を見てみますと、1044条は904条の2を遺留分に準用していませんから、寄与分は遺留分算定の基礎となる財産額に算入されないことになります。
 
また、寄与分の主張が許されるのは、遺産分割の場合と、死後認知を受けた相続人の価額支払の請求の場面に限定されています。
しかも、寄与分というのは、共同相続人間の協議か、協議が調わないときまたは協議をすることができないときに家裁の審判によって初めて定められるものであるはずです。
したがって、上記のような状況で遺留分減殺請求を受けた場合に、減殺額を減らすために抗弁として自らの寄与分を主張することは許されないと解すべきことになります。
 
東京高決平成3年7月30日も同旨です。
結局、被相続人が寄与分を考慮して多くの贈与や遺贈をしても、特別な意味は持たず、寄与者でない者が贈与や遺贈を受けたときと何ら異ならないことになってしまうわけです。寄与分は減殺請求の手続内では極めて無力な存在になっているということなのです。
 

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